権利処理の仕組み、新株引受け申込み、権利入札
権利処理の仕組みについて
貸借取引を行うことのできる銘柄(制度信用銘柄)について、配当金または株式分割等による株式を受ける権利等が付与される場合、証券金融会社は、株式を担保に融資を受けている証券会社(以下「買い方」という。)にその権利を移転し、貸株を受けている証券会社(以下「売り方」という。)から、その権利を提供してもらいます。
証券金融会社は、権利付売買最終日において貸株に充当していない融資担保株式について、証券金融会社を株主として報告することにより権利を確保しますが、貸株に充当している融資担保株式の部分の権利は確保できません。このため、貸借取引においては、当該権利にかかる調整が必要であり、この調整を「権利処理」と呼びます。
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権利処理の対象としては、
- 株主であれば当然享受できるであろう利益が生じること。
- 権利落ちの時点で金銭的に評価できるものであること。
- 譲渡可能なものであること。
- 売買単位に比して平均的比例的に利益を受けられるものであること。 であることが必要であり、具体的には配当金、株式分割による株式を受ける権利、新株予約権等が対象となり、それぞれ以下の方法により権利処理を行います。
現金配当金の権利処理
証券金融会社は、売り方から発行会社が支払う配当金額より源泉徴収税相当額を控除した金額を受取り、買い方に対しこれを支払うことにより処理します(決算差金)。
株式分割等による株式を受ける権利等の権利処理
(1)株式分割等による株式を受ける権利が付与され、売買単位の整数倍の数の新株式が割り当てられる場合
権利付売買最終日の当該銘柄にかかる貸借取引残高株数については、権利落日をもって、当該株数を新株式割当率に1を加えた数を乗じた株数に調整することで処理します。また、権利落日に最終値段がない場合には、権利付売買最終日の 貸借値段 を新株式割当率に1を加えた数で除した額に調整し、権利落日における貸借値段とします( 残高読替)。
例:分割比率が1:2の株式分割が行われると仮定した場合
貸借残高株数 | 権利付売買最終日の貸借値段 | |
---|---|---|
株式分割前 | 1,000株 | 1,000円 |
株式分割後 | 2,000株 | 500円 |
注1
株式分割銘柄の信用建玉を有する投資家(信用買い顧客および信用売り顧客)の場合は、それぞれ取引先証券会社において、株式分割の比率に応じて買付株数または売付株数が増加され、また、最初の売買値(約定値段)が減額されることとなります。
例:制度信用取引で1,000株を1,100円で約定した投資家
制度信用残高株数 | 約定値段 | |
---|---|---|
株式分割前 | 1,000株 | 1,100円 |
株式分割後 | 2,000株 | 550円 |
(2)上記(1)以外の場合(株式分割等により売買単位の整数倍以外の新株式等が割当てられる場合、または新株予約権が割当てられる場合)
分割比率が小数点を含む株式分割などの場合、調整後の株数に単元未満株が生じることとなり、反対売買による弁済ができなくなってしまうことなどの問題があることから、金銭換算することで処理します。
証券金融会社は、新株式等について、買い方から新株引受け申込みを受けたのち、これにより全株消化されなかった場合は、証券金融会社に割当てられる新株式等(入札株数)について、競争入札方式(権利入札)により売却処分します。
注2
融資超過の場合。貸株超過の場合は新株式等を権利入札により買付けます。
この権利入札による落札代金総額を落札株数で除して算出した落札平均価格に新株割当率を乗じて権利処理価額を算出します。
証券金融会社は、売り方から建て株数に権利処理価額を乗じた金額を受取り、買い方にこれを支払うことにより処理します。また、新株引受け申込みにより全株消化した場合は、権利付売買最終日の最終値段に基づいて算出した価格を権利処理価額とし、前記と同様に処理します。
注3
当該銘柄の信用建玉を有する投資家の(信用買い顧客および信用売り顧客)場合は、それぞれ取引先証券会社において、最初の売買値(約定値段)より権利処理価額の分だけ減額されることとなります。
新株引受け申込み
貸借取引を行うことのできる銘柄(制度信用銘柄)について株式分割等による売買単位の整数倍以外の新株式等が割当てられる場合、または新株予約権が割当てられる場合、証券金融会社は、当該銘柄の貸借取引(制度信用取引)の権利処理を行うため、新株の引受け申込みを受付けます。
新株の引受けを希望する場合は、買建て株数の範囲内で、割当後の新株式が売買単位の整数倍の株数となるよう、権利付売買最終日(取引先証券会社が必要に応じて定める締切時間となります。)までに取引先証券会社にお申込みください(申込みは親株ベースで、割当てられる新株式数ではありません。また、証券金融会社へ直接申込むことはできません。)。なお、権利付売買最終日に、証券金融会社(取引先証券会社)において、新株の引受け申込み株数が融資超過株数(買い超過株数)を上回る場合または貸株超過(売り超過)の場合は、ご希望に添えないことがあります。
新株の引受け申込みにより割当てられた場合は、基準日の翌営業日までに当該引受け代金(権利処理価額×割当株数)を取引先証券会社に支払う必要があります(取引先証券会社によって取扱いが異なる場合がありますので、あらかじめ当該証券会社にお問合せください。)。なお、権利処理価額は、権利落日に、証券金融会社において当該銘柄の新株式について行う権利入札により決定されることになります。
新株の引受けをされた場合、新株の授受は通常の場合基準日の翌営業日となります。
注4
証券金融会社における融資超過株数を上回る新株の引受け申込みがあった場合には、別に定める方法により算出した権利処理価額により引受け代金が決定され、この場合は権利入札は行われません。
権利入札
貸借取引を行うことのできる銘柄(制度信用銘柄)について株式分割等による売買単位の整数倍以外の新株式等が割当てられる場合、または新株予約権が割当てられる場合、証券金融会社は、当該銘柄の貸借取引(制度信用取引)の権利処理を行うため、権利落日に、当該銘柄の新株式について権利入札を行います。
この権利入札は、証券金融会社が貸借取引の担保として保有する証券金融会社名義の株式に付与される新株式等について、競争入札方式により売却(売入札)を行うものです。
注5
本解説では、以下基本的に融資超過の場合について記載しています。貸株超過の場合は、証券金融会社は品貸入札で借株した先に対して新株式等を引き渡すため、権利入札により買付(買入札)を行うこととなります。
証券会社のほか一般の投資家も取引先証券会社を通じてこれに参加することにより、証券取引所における普通取引によらずご希望の価格で株式を取得することができます。なお、東証市場およびPTSにつきましては、各市場の貸借取引残高を合算し、合算後の融資超過残高に対し権利入札を行います。
入札の日時は、通常の場合、権利落日の午前11時30分から11時50分までとなっております(投資家については取引先証券会社が必要に応じて定める締切時間までとなります。)。応札に当たりましては、応札株数および応札単価(通常の場合、10銭単位)等を明示のうえ、取引先証券会社を通じてお申込みください(証券金融会社へ直接申込むことはできません。)。なお、入札対象銘柄が多数となる場合または割当率が大きい銘柄がある場合等については、入札時間や応札単価等の取扱いを一部変更する場合がありますのでご留意ください。
株式分割における権利入札の具体的な処理方法は、次のとおりとなります。
注6
新株予約権の無償割当て等にかかる権利入札においては、権利落日以降に、割当ての中止や割り当てた新株予約権の無償取得が行われても、権利処理を無効にすることや権利処理価額を変更することはありませんのでご注意ください。
議決権の処理方法
貸借取引の融資担保株式等に付随する当社名義の議決権については、発行会社の事業に極力影響を与えないようにする観点から、原則として行使しないこととしております。
当社名義の貸借取引融資担保株式等にかかる議決権行使の取扱いについて